逸材

人数は多くありませんが、先生はそれでも何人かの子どもたちを見てきました。

カンフーを教えること自体は男女どちらでも構わないのですが、比率としては圧倒的に男の子が多かったものです。

今どき男女で分けるのは野暮だと言われますが、長年見ていると、やっぱり違いははっきり出ます。

今日はここに、当チームの傾向を出しましょう。
もちろん、必ずしも全員が同じというわけではありませんが、少なくとも先生の観察によると以下のようなことが言えます。

だいたいこうだ、という傾向

鼻血が出たとき、すかさずティッシュを差し出してくれるのは女の子が多く、そもそも鼻血を出すのは男の子が多い。
ケガをするのはまず男の子で、バンソーコーを常備しているのは女の子。しかも男の子のけがの理由は、ほぼ休憩時間に遊びすぎたせいです。

「もう少し前に」と指示を出すと、男の子の移動方法は99%両足ジャンプ。前過ぎて「戻れ」と言うとまたジャンプ。生まれる前に神様に約束してきたかのように、何代変わっても同じことをする。
そもそも跳ぶ地点ばかりを狙っていて、周りのことも先生の顔も見ていないので、ちょうどいいところへ移動できるわけがない。
いちいち時間がかかるけれど大丈夫、そのロスタイムは先生は訓練計画に織り込み済みなので。


転がってきた卓球の球を反射的に追いかけるのも男の子。そのあと次の獲物が気になって集中するあまり、他のことが上の空になるのも男の子。

高いところに登るのも、細いところに無理に収まろうとするのも、広ければとりあえず走って行ってしまうのも、白いタイルだけ踏んで移動しようとするのも男の子です。
きっと彼らにとってこの世界は、冒険に充ち溢れすぎているのでしょう。



”何でもじゃんけん”は彼らの常識。
一日一回の兄弟げんかはノルマだから仕方ない。
ネジだのクリップだのをしょっちゅう拾うのは、それが宝物だから。

女の子の方が友達同士一緒にいるイメージがあるかもしれませんが、「お前がやるならおれもやる」と”つるむ”のは男の子。そうやってどいつが一番かをはかり合うのも男の子。
逃げ足の速さも芸のうち。
こういう悪さは、先生としてはまとめて叱れるので案外楽です。
毎回ひとりだけ悪ふざけに加わらない子がいると、逆に心配になったりします。

女の子は身を寄せてお話しするのが好きですが、男の子も自分たちで車座になれば相当おしゃべり。
「輪」というフォーメーションが、彼らにとってどのような意味を持つのか研究の余地がありそうです。

またなぜか扇風機を前にすると、「ワレワレハ ウチュウジンダ」と自白してしまうのも見逃せない点です。

大型新人

さて、ここまで傾向を整理してきました。
冒頭に述べたとおり、これらはみな先生がカンフーを教えるようになって、みんなとお話をしたり、観察を続けたりした結果に得たものです。

長い年月のうちには様々な子がいて、いろんな武勇伝があって、先生はたいていのことには驚かなくなっていたのですが──いやあ、君には久しぶりにやられました。

君は何年かに一人の逸材、まさに大型新人です。


「いつから夏休み?」には答えられても、「いつから学校?」には答えられない。
これはboysにとって、特に珍しくもない傾向です。

でも君は言いましたね。

「いつからかわからない。何を持っていくかもわからない。どこに行くかもわからない」と。
この返答は、久々の衝撃でした。

痛い、痛すぎる。

「学校だろ!」と内心ツッコミつつ、あとから「クラス替えでどの教室に行くか分からない、という意味だったのかな?」と理解に努めようとしたのは──
先生がバンソーコーを持っていたからなのでしょうか。

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