棍術
雨が向こうから突然走ってきて、問答無用で全てをのみ込むのを見たことがありますか?
傘なんて役に立ちません。
逃げ場などありません。
音は猛烈、息もできない。
耳がおかしくなり、声もかき消されます。
ダンッ!
ダダダダダダダダダダダダダダダダ……

呆然と立ち尽くす世界は反転して無音。
――あの感覚を棍で表現できたら、最高です。
最初の力は自分で起こします。
だけどその後は「借力」です。
長く重い棍の力を借りて上へ跳び、下へ打撃するのです。
密で、至らぬところはありません。
力は刻一刻と棍と自分の間を行き来し、見る人の心を猛烈に揺さぶり、巻き上げていきます。
遅れれば力が制御できなくなります。
つまり、相当に鍛え上げた自分の体がなければ、この世界は構築できません。
”棍打一大片,密集如雨”
棍をやるなら、目指すのはそこ。
先生も、そんな勇猛な演技を見たいと願っています。
棍をはじめて持ったふたりも、いつかそうなってくれるでしょうか。

