自選套路の芸術性
武術たいきょくけんのトウロは、
対戦相手がいるものではなくて芸術性があるものです。
でも芸術性ってどんなものでしょう?
ただ知ってる動作を並べるだけじゃダメ?
どんなふうにしたら、
すごくかっこいい長拳のトウロができるんでしょう?
この記事では、武術太極拳の自選套路を作る時に役だつ
いくつかのポイントをご紹介します。
この記事の詳細が気になる方はこちらの「競技会に向けた、長拳自選套路の編成法 補足」もご覧ください。
トウロ全体の流れ
大会に出るトウロなら、まず全体をひとつの作品として考えましょう。
まるで好きな音楽を聴くように、イントロはどうかな、つぎはどうつながるかな、盛り上がりはどこで
変化はどうやって起きて、さいごはどんなふうにエンディングにむかうかな、こんなふうに考えます。
そうやって豊かにふくらませた内容は、「構成」とか「布局」とか呼ばれる部分をカバーしてくれます。
いろいろな工夫
動作のくみあわせで、トウロの印象が変わります。
長拳では、印象のちがうものどうしを組み合わせて使うといいですよ。
たとえば青い空の下に青い海だと、ぜんぶ青くて境い目もよくわかりません。
でも青い空に白い雲が浮かんでいたら?
それが水平線から、もくもくたちあがる入道雲だったら?
青い景色が、急にはっきりしてくるでしょう。
白い雲だって青い空をうしろにして浮かぶほうが、雪の日に見るよりずっと真っ白にみえるはずです。
トウロの動作も同じように、お互いを引き立て合うものがないか考えてみましょう。
いくつか、引き立て合うものをご紹介します。
- 動くところと、止まるところ
- 速いところと、ゆっくりなところ
- 強いところと、柔らかいところ
- 高いところと、低いところ
1.動くところと、止まるところ
だいたんに動くあいまに、ちょっと止める動きをいれたりすると、そこまでの元気な動きがもっと元気にみえたりします。
連続して動いたあとにピタッと止まったり、躍り上がってジャンプを見せたあとに流れるように足を運んだり。そんなふうにすると動きの差が大きいので、ダイナミックに見えたり、なめらかに見えたりします。
止まったところでは目をしっかり使うといいです。
目でしっかり見すえている感じを出せたら、動きが止まっても、戦いの緊張感はちゃんと続いている感じがしますから、その流れをうけて、また先の動作を考えたりしやすくなります。
2.速いところと、ゆっくりなところ
速さを見せたいときは、頑張ってはやくしてもいいですが、逆にスローな動きを加えてみてもいいです。
実際に速いかよりも、ゆっくりなものと比べて速く見せた方が、トウロの表現では良いばあいがあります。
スローな動きから加速してもおもしろいです。
激しく戦っている様子と、敵と見あっている様子、こんな状況の変化も「はやい」と「ゆっくり」の工夫でうまく表現することができます。
こんなふうにしていくと、いいリズムも生まれてきます。
3.強いところと、柔らかいところ
「打った」とか「蹴った」というところはだいたい強いところです。
よけたとか、受け流した、といようなところは柔らかいところです。
そんなふうに強い力をみせるところと、柔らかい動きを見せるところを、くみあわせてみましょう。
強いと弱いを考えるのは手足だけでなくて、他の部分でも考えてみます。
たとえば胸や腰を柔らかく使ったり、足の運びをまっすぐでなく曲線にしたりすることで、強い感じと柔らかい感じを、いろいろ変化させることができます。
4.高いところと、低いところ
高くジャンプした後に、たとえばプーブーみたいな低い姿勢をとったら、お互いがひきたちます。
低めに走り出して、高い位置で蹴ったりすれば加速した感じも出ますし、パワーの盛り上がりもわかりやすくなります。
他にも姿勢とか足の低さだけでなくて、その時の手は上にあげるのか、横に伸ばすのかでまた印象が変わります。
高いところと低いところも、意識して組み合わせてみましょう。
個性
自分だけのトウロなのですから、自分の得意なものがアピールできるように工夫してみましょう。
勝つためには、今チャンピオンになっている選手から学ぶ必要もあるかもしれません。
でも、自分だけの可能性もあるかもしれません。
自分はとにかく疲れ知らずで人より元気に動き回れる!
自分は繊細に動くのが得意!
自分は柔軟をがんばっているので、開脚なら負けない!
こんな感じでじぶんの得意なものを考えて、それを活かす方向にトウロを考えます。
上手に活かすことができたら、それが「風格」になります。
みなさんのトウロが、素敵なものになりますように!
執筆者 石川 まな (カンフーチーム 点睛会 代表)