長拳技能検定5級はこれで合格
長拳技能検定試験は、どなたも6級から受けることができ、同じ日に5級にもチャレンジすることができます。
「長拳?!あの飛んだり跳ねたりする種目?!無理無理!子どもがやるものでしょう?」
いいえ、そんなことはありません。
子どもじゃなくてもだいじょうぶです。長拳技能検定5級はとってもカンタンなんですよ!
試験の内容は、カンフー体操2と、あとほんのちょっとの基本だけ。大人でも事前に準備をすれば、問題なく通過できます。
こちらの記事では、6級に受かったみなさんが、長拳技能検定5級の審査にもスムーズに通れるよう、かんたんなコツをご紹介します。
また今後の上達に向けて、ところどころ深掘りした内容にもふれましたので、もう5級にはうかったという方も、読み物としておたのしみください。
長拳技能検定5級の内容
- 抱拳礼
- 手型と手法
- カンフー体操 2
検定手順
抱拳礼
並んで立ち、名前を呼ばれたら「はい」と言いながら、審査員にむかって抱拳礼をする。
審査員の返礼を待って、元の姿勢にもどる。
手型と手法
- 抱拳をする
- (号令にあわせて)衝拳をする
- (号令にあわせて)推掌をする
カンフー体操2
カンフー体操 2 を、ひとりかまたは参加者数名で、号令なし、あるいは号令にあわせておこなう。
抱拳礼をして終える。
長拳技能検定試験5級のポイント
抱拳礼は、みなさんは6級で合格されていますから、問題はないでしょう。
おなじようにやっていただければ大丈夫です。もちろん、「はい!」という返事も大きな声ではっきりするようにしてください。(心配な方は「長拳技能検定6級はこれで合格」をご確認ください。)
5級でのあたらしいポイントは、手型・手法、カンフー体操2になりますので、今回はこちらを説明いたしましょう。
手型
「拳」と「掌」、ふたつの手の形が審査されます。
通常この審査は、「拳と掌を見せて下さい」と指示されるのではなく、このあとの手法(抱拳、衝拳、推掌)のなかで、同時に審査されます。
…ところで、みなさんは手型と手法という言葉を、はっきり区別できますか?
漢字を見ればそのままですが、「手型」は武術のなかで刻々と変化する手の形のことをさします。動いていても、動いていなくても、武術がいったん始まれば、手には形がなければなりません。
それが手型です。
いっぽうの「手法」は、目的にあわせて手を運用させる方法のことです。かんたんに言えば、手の使いかたです。
こちらは、動きをともなって完成されます。ですから、「衝拳という手法は、拳という手型でおこなう」ということができます。
このような知識は試験にはでませんが、中国の伝統文化である武術太極拳では、どうしても本と向き合い、日本語中国語あわせて、膨大な漢字とつきあっていくことになります。
ひとつひとつの簡単な言葉を、はやい段階から整理しておくことは、のちのハードルを下げることになるでしょう。
さて、話を手型にもどします。
「拳」は、かならず親指を外に出してかたく握りしめ、拳面はたいらにします。
太極拳よりも、ぎゅっと、きつくにぎります。親指だけを、拳面からとび出させたりしてはいけません。
「掌」は、親指をまげ、のこりの四本の指はのばして、しっかりそろえます。
これは、五指をやわらかく開く太極拳の掌の形とは、あきらかに違いますから、混同しないようにします。
このふたつはおうちで座っても練習できます。
両手をにぎって拳にしてみたり、掌にしてみたり、何回もやってみましょう。
手型というものは、動かない形だとしても、それは変化を秘めた形なのです。ですから、「拳を見せて下さい」と言われて、間違えないように、ようやく一個かたちを作って見せられるというのでは、ほんとうは違うのです。
自然に、拳から掌へ、掌から拳へ、どう移ろっても形を追える状態が理想です。そのためには、おうちでグーパーグーパーと、何回も、変化の中で慣れていくのがよいでしょう。
手法
たいていは参加者何人かでならび、「抱拳ようい」や、「衝拳ようい」と指示されたら、気をつけの姿勢から、ひだり足を横に一歩ひらき、抱拳をします。
そして「衝拳、はじめ」などのあいずで右、左…と衝拳をします。号令は人数にもよりますが、バラバラでは審査しづらいので、だいたいかけてもらえると思います。
ついで推掌の審査は、いちど手をおろし、足も閉じた気をつけの姿勢に戻るかもしれません。
もどらずに、衝拳からつづけて行われることもあります。その場合は、衝拳を抱拳に引き戻した後、腰の位置で両拳を掌に変えてからおこなうことになります。
このあたりの手順にかんしては、事前講習会でおしえてもらえますから、なにも心配はいりません。
つぎに動作の注意点をすこし説明しましょう。
1.抱拳と衝拳
抱拳は、背中の筋肉を使って、拳の位置をわき腹のややうしろよりにおきます。腹の前でかまえないようにしましょう。
長拳の基本姿勢は、胸をひろく開いたものです。太極拳の含胸とは異なります。また、長拳は動作が速く、跳んだりしますし、足技を多用します。ですから「気」というものも、重心が低めの太極拳より引き上げぎみに行います。
基本姿勢は、その拳種の見た目を左右するだけでなく、動き方にもかんけいします。
基本的な抱拳で、両手を前に構えすぎると、長拳の基本姿勢が出しづらくなりますので、気をつけましょう。
衝拳では、腰からひねって、拳を遠距離に打ち出すようにします。そのときに、打ち出す目標位置は左右の手でだいたい同じです。右手が右を打ち、左手が左を打ち、ではなく、腰をひねることで左右の手が到達するのは、だいたいおんなじ位置になるのです。
打ち出すときは、脇が早々に空かないようにします。
長拳では沈肩垂肘はあまりはっきり要求しませんが、実はその意識はつねに持っていなければなりません。大きく遠くに打ち出した時も、腕の下から脇腹には、一体化してつながったような引き締め感がひつようです。
それは今は難しいかもしれませんが、とりあえず打ち出す際には、肘をそとに張らず、腕のうちがわをなるべく脇腹に擦って出すようにしましょう。
2.推掌
推掌の要求は、衝拳とほとんど同じです。
ときどき見かけるミスとしては、出した掌心が外を向いてしまっているものがあります。
掌心は正面か、あるいはやや内向きにします。つまり、小指の側がこころもち前です。このような掌は力が外に逃げず、手型自体にも螺旋形をふくみ、良いとされます。(やりすぎてはいけません。感覚がはっきりしない場合は、掌は正面に向けましょう)
衝拳も、推掌も、肘は伸ばしきるまでしっかり出します。
手を繰り出すたびに、おおきく膝を曲げのばしする方もときどき見かけます。
力をこめていてたいへん素晴らしいと思いますが、体が上と下に振れ過ぎるのは、硬い感じも与えますし、長拳の検定5級では避けた方がよろしいです。
長拳の発力に関しては、またべつの機会にお話しします。
カンフー体操 2
5級の「カンフー体操2」は、6級の「カンフー体操1」と同様の手順でおこなわれます。
合否の基準は「とおしてできること」、「発声がただしいこと」です。
カンフー体操1が上手で、2になると急にへたになる人はあまりいません。審査の基準も1と2では同じですから、6級に受かった方は、おなじ感覚でまちがえずに、カンフー体操2をこなせれば問題はありません。
馬歩、弓歩などは、少々高くても大丈夫ですから、おちついてなるべく正しくやりましょう。
弾腿はあるていどの曲げ伸ばしをして、つま先で蹴ります。
あたらしく提膝がでてきますが、これは太極拳とほとんど同じですから、足首とつま先までぴんと伸ばしておこないます。
ジャンプのあとの着地は、テキストでは同時着地の指定ではなくて、右、左と順に着く「換跳歩」です。
震脚も目新しい物ではないと思います。ドンッとおもいきり踏んでください。
頂肘のときの左右の手の形は、右が拳で左が掌です。ちょうど抱拳礼と同じですからかんたんです。このとき「ハイッ!」と元気に言うのを忘れないようにします。
また、この頂肘のときの足は、横裆歩ではなく弓歩です。右足のつま先の向きに気をつけましょう。
最後の足は左足をとじますから、これはカンフー体操1とは逆ですね。
いろいろ書きましたが、心配いりません。
カンフー体操2は、とにかく間違えずに、声もしっかりだせれば大丈夫です。
長拳技能検定5級の中国語
審査中に使われるかもしれない言葉のご紹介です。言われたときに、わかるくらいになっておけば安心です。
カッコの中は四声になります。
手型 shou xing (三、二)ショウシン
手法 shou fa(三、三)ショウファー
抱拳 bao quan (四、二)バオチュエン
衝拳(冲拳) chong quan (一、二)チョンチュエン
推掌 tui zhang (一、三)トイジャン
長拳技能検定試験5級、合格の為のポイントまとめ
技能検定5級は、6級の内容から手型と手法が増え、カンフー体操が2に変わっただけですから、すこし準備をすれば、どなたもかんたんに受かることができます。
合格のためのポイントは、
抱拳礼を「はい!」と言いながらおこなうこと。
抱拳から衝拳、推掌がそれなりにできること。
カンフー体操2をまちがえずに、声も出してとおせることです。
おちついてやれば大丈夫です。
間違えてもやりなおしもできます。
事前講習では、ぜんぶ丁寧におしえてもらえます。
そして、
みなさんに受かってもらいたいと思っている審査員ばかりです!
おわりに
5級の合否に関係はないけれど、たいせつな点をさいごに補足します。
今回試験項目でとりあげられる手型と手法は、基本功試験の中でだけ見せられるのではなく、套路(カンフー体操2)のなかでじっさいに活かせるくらい、しっかりと身につけるのが理想です。
それがなぜかと言いますと、今後昇級するにつれ、合否基準表に明記がなくても、基本功でできることは套路の中でも当然できるものだ、という審査に変わっていくためです。
また、低位級で一度合格した内容は、その後の上位級では試験項目になくても、できてあたりまえ、できなければ先には進ませられないという、厳しい審査に少しずつ切りかわっていくためです。
その審査にそなえるために、基本功と套路をべつものとしてとらえるのではなく、基本での課題は、套路中でもできるものだという理解がひつようになるのです。
また、「拳面」「掌心」「横裆歩」「換跳歩」など、この記事中で説明を加えていない言葉がいくつかありました。手型のところでも触れましたが、このような言葉は今後たくさんおぼえていかなければなりません。
ひとつひとつの言葉は、ひとつひとつのたいせつな基礎そのものとなります。
名まえがついているものには、形と役割があたえられています。現代の長拳は、伝統名称をほとんど使用せず、太極拳や伝統拳にくらべてわかりやすいものとなっています。
それでも、漢字は一字で、海の様に深い表現となることがあります。
知らずには、武術の中で過去の先人とも語り合えないでしょうし、心にはっと何かを感じる瞬間も少なくなってしまうかもしれません。
武術をたのしみながら、長く深く学ぶために、武術にまつわる言葉は、JWTFのテキストをみたりして、少しずつおさえておきましょう。(当サイトでも、追って記事にしていく予定です。)
今回の記事はここまでです。
さあ、みなさん、技能検定5級をぜひ楽しんで受けて来てください!
きっと大丈夫です。
そしてこれに受かったら、万全の準備をして、その先どこまでも進みましょう!
※試験の内容、採点の基準等は、この記事に関わらず、必ず最新のJWTF公式実施要綱でご確認ください。
執筆者 石川 まな (カンフーチーム 点睛会 代表)
参考資料
〇李成银 编著 『中国武术咨询大全』 山东教育出版社,1993